キャズム理論とは?イノベーター理論やプロダクト・ライフサイクルとの関連についても解説

この記事では、マーケティングにおける基礎知識であるキャズム理論について、関連するイノベーター理論やプロダクト・ライフサイクルの説明も交えながら解説をしています。

キャズム理論とは

キャズム理論とは、マーケティングにおいて、新製品や技術が市場に普及する過程を説明する理論です。特に、革新的な技術や製品が初期の利用者層(イノベーター)から主流市場(アーリーマジョリティ)へと広がる際に直面する「障壁」=「キャズム」について説明しています。

この理論は、アメリカのコンサルタントであるジェフリー・ムーア(Geoffrey A. Moore)が提唱し、1991年に彼の著書『Crossing the Chasm(邦題: キャズム – ハイテク市場の攻略法)』で詳しく紹介されました。

イノベーター理論との違い

キャズム理論の基となる理論に「イノベーター理論」があります。イノベーター理論とは、新商品を購入する順番を「イノベーター」「アーリーアダプター」「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」「ラガード」という5つの消費者グループに分類した理論で、社会学者のエヴェリット・M・ロジャース(Everett M. Rogers)が1962年に提唱した理論です。

イノベーター理論の図

「イノベーター」は、新しい商品や技術にいち早く反応し、利用をする層です。「アーリーアダプター」は、オピニオンリーダーで、新商品や技術を評価し、周囲に推奨して広めます。そのアーリーアダプターから影響を受けるのが「アーリーマジョリティ」です。「レイトマジョリティ」は、半数以上が採用すると動く層、「レイトマジョリティ」は最後に採用をする層となります。

キャズム理論は、この消費者グループの間にあるキャズムという「障壁」に注目した理論になります。まだ誰も使用していない商品や技術を使うのが、「イノベーター」と「アーリーアダプター」のため、これらの層の比率である、16.0%がキャズムです。

ターゲット市場における利用者の比率を16.0%を超えることが新商品や技術のまず1つの大きな目標となります。キャズムを超えると、アーリーマジョリティ層からの利用者が増えていき、マスへと普及が進んでいきます。

プロダクト・ライフサイクル(PCL)との関連性

プロダクト・ライフサイクル(Product Life Cycle:PCL)とは、製品が市場に登場してから衰退するまでの一連の過程を示す理論です。

このライフサイクルは、製品の売上や利益が時間とともにどのように変化するかを説明し、各段階での適切なマーケティング戦略を考えるためのフレームワークとして使われます。イノベーター理論との関連では、各過程のターゲティングにおいてイノベーター理論が基となっています。

PLCの図

「導入期」では、市場の拡大を狙い、イノベーターとアーリーアダプターをターゲットにブランド認知を促進します。次に「成長期」では、市場シェアの拡大を狙い、アーリーマジョリティに対して自社の優位な特徴(Point Of Difference: POD)を訴求して獲得を目指します。

「成熟期」に入ると、シェアの維持のためにロイヤル顧客の継続に力を入れ、「衰退期」は、生産性を高めて、できるだけ最小限の投資で利益を確保する、もしくは、市場からの撤退を検討します。(衰退市場において、最後の1社となり利益を得続けるという「残存者利益」を狙うという戦略もあります。)

また、価格については、導入期は、高めに、成長期から競合の動向も意識しながら徐々に価格を低めに設定していきますが、衰退期は、高めに設定することで、減少した利用者からの単価を上げることで利益の維持につなげます。

まとめ

以上が、キャズム理論とそれに関連するイノベーター理論、プロダクトライフサイクルにについての基礎知識になります。

私が勤務する会社でもいくつも新規事業が立ち上がっていますが、早々に撤退する事業が基本的には多く、稀に成長を実現し、継続する事業もあります。新規事業の成否を分けている一つの基準として、「イノベーターの存在」があります。

自社の新商品を利用してくれるイノベーターが見つかれば、キャズムを超えられるように投資を続ける価値があるかもしれません。しかし、そもそもイノベーターも見つからないようであれば、その事業の継続は厳しいと考えられるでしょう。

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