この記事では、マーケティング業界で近年、注目されている「パーセプション」について、その意味や関連する概念との違いなどの基本情報をまとめています。
パーセプションとは
マーケティングにおける「パーセプション」(perception)とは、消費者が商品やサービスに対して抱く「認識」を指します。パーセプションは、消費者が商品やサービスを選択する際の重要な要素となります。
例えば、あなたは、「マクドナルド(マック)」と聞いて何を思い浮かべますか?「安くて早いハンバーガーショップ」「たまに無性に食べたくなる」「ビッグマック」などの言葉が思い浮かんだとしたら、それらは全て、マクドナルドのパーセプションです。
マーケティングは、「パーセプションの戦い(奪い合い)」であると言われており、企業にとって、いかに消費者に行動してもらいたいパーセプションを形成できるかが重要となります。
マクドナルドにおいても、例えば、競合のファーストフード店が、「安くて早いハンバーガーショップ」というパーセプションをマクドナルドよりも強く形成していると、「安く、早く昼食を済ませたい。今日は、ハンバーガーの気分だ。」という人をより多く店舗に誘引することができることでしょう。
パーセプションとブランドイメージの違い
パーセプションと似た概念にブランドイメージがあります。これらの違いについて表でまとめています。
パーセプション | ブランドイメージ | |
---|---|---|
意味 | 消費者が商品やブランドに対して抱いている認識 | 企業が自社の商品やブランドの価値を伝えるために浸透させたいイメージ |
視点 | 消費者視点 (消費者がどう認知しているか) | 企業視点 (消費者にどう思われたいか) |
つまり、企業が伝えたいことではなく、消費者がどう受け取るかがパーセプションです。自社として、戦略的にブランディングしたいことと、実際に消費者が商品・サービスに対して抱いている認識にはギャップが生じている可能性があります。まずは、その実態を調査により把握し、ギャップを埋めるための「パーセプション・チェンジ」を実現していく必要があります。
パーセプション・チェンジとは
パーセプション・チェンジとは、その名の通り、現状、消費者が自社に対して抱いているパーセプションを変えること(認識変容)を意味します。それにより、消費者に取って欲しい行動をして貰えるようにすることが目的です。
パーセプション・チェンジによる成功事例には次のような企業があります。各社、パーセプション・チェンジに成功したことで、商品・サービスの売上拡大や顧客層を広げることなどの成果につながっています。
企業・商品 | Before | After or New |
---|---|---|
西友:プライベートブランド | 「安かろう、悪かろう」 | 「みなさまのお墨付き」 |
森永:ラムネ | 「子どものお菓子」 | 「大人のパートナー」 |
おやつカンパニー: ベビースターラーメン | 「子ども向けの懐かしいお菓子」 | 「料理にも使えるお菓子」 |
資生堂:UNO | 「メイクは女性がするもの、男性は恥ずかしい」 | 「第一印象はつくれる」 |
引用:Web担当者Forum「ベビースターラーメンの事例で学ぶ「パーセプション」 世の中の「認識」を変えて売上が増加」
最後の資生堂「UNO」の事例については、既存のパーセプションを「変える」のではなく、新しく「つくる」ことに成功した事例です。新規商品では、新しいパーセプション、つまりは消費者にとっての新たな価値を創造し、認識をつくることも含まれます。
パーセプションフロー・モデルとは(カスタマージャーニーとの違い)
パーセプションフロー・モデルは、カスタマージャーニーに代わる新たなマーケティング・マネジメントの手法として、Coup Marketing Company代表の音部大輔氏によって開発されたフレームワークです。
企業のマーケティング活動の全容を俯瞰的に可視化し、関係者との共通認識を持って一貫したコミュニケーションへとつなげるという点では、カスタマージャーニーもパーセプションフロー・モデルも同じと言えますが、違いについては下表のようにまとめることができます。
カスタマージャーニー | パーセプションフロー・モデル | |
---|---|---|
主な活用シーン | 接点(チャネル)やコミュニケーション施策の改善点の発見 | ブランディングの設計 |
捉える変化 | 消費者の「行動」の変化(購入や推奨に至るまでに何に接触し、どう気持ちが変化したか) | 消費者の「認識」の変化(心理状態が、どう企業にとっての理想状態に変化していくか) |
対象となる単位 | カテゴリ (例)スマートフォン | ブランド (例)iPhone, Google Pixel |
対象となる4P | Promotion(販促施策) Place(チャネル) | Product(製品), Price(価格)を加えた4P全て |
カスタマージャーニーが、販促施策(Promotion)やチャネル(Place)の改善を目的として、消費者の現状の行動の軌跡を可視化するのに対して、パーセプションフロー・モデルは、企業のブランディング設計を目的として、製品(Product),Price(価格)も含めた4P全ての要素を対象に、どのように自社として変えたい(つくりたい)理想のパーセプションへと消費者の心理状態を変化させていくかを可視化したものであることが違いとなります。
以上が、パーセプションに関する基本情報となります。