SNSマーケティングは多くの企業が導入を試みる販促施策の1つかと思われます。
しかし、通常のWeb広告などと異なり計測が困難だったり、売上への直接的な貢献が見づらい分、「何を目的にして運用しているのかわからなくなる」、「そもそも上司を説得して、社内決裁が下りない」などなど悩みが多い領域でもあるかと思います。
そこで今回はSNSマーケティングのKPI設定をテーマに、私の実績をもとに考え方をシェアしたいと思います。
そもそもなぜSNSマーケが重要なのか?
こちらはオプト社が以前発表した「スマートデバイス時代の情報・広告意識調査」から引用したグラフになります。「バナー広告をわずらわしいと思うことがある」や「同じ広告が何度も出てくると不快である」などの項目で「そう思う」と「どちらかとえいばそう思う」と答えた割合は8割近くになっており、皆さんも感覚としてお持ちのように増加傾向にあるWeb広告にユーザーは不快さを抱いているという現状があります。
引用元:https://www.opt.ne.jp/news/pr/detail/id=2578
また、こちらはアライドアーキテクツ社が発表したレポート内の「Q.ご自身が よく利用されているソーシャルメディアで、好きなブランドや企業のアカウントから情報を得ていますか?」という項目の結果です。実に情報を得ている人は全体で8割近くになっており、いかにSNSの投稿が購買において重要な情報源になっているかがわかります。
引用元:https://sns4biz.com/column/343
これらの調査結果からもSNSマーケは企業のマーケティング活動において重要であるということがわかります。
また、弊社のサービスでいうと、分析ツールからみたtwitterからの流入者(広告ではなく、弊社のサービスサイトURLが掲載されたユーザーからの投稿経由の自然流入)のCVRが平均CVRの4倍近く高いということが事実が判明しました。
これは所謂UGC(User Generated Contents:ユーザーによる投稿)がいかに商品サービスの購買に影響が大きいのかということを証明する強力なFACTであり、このデータからも弊社ではUGCの創出を重要なアクションとしてマーケ戦略の中に組み込んでいます。
また、SNSマーケは運用が安定しフォロワー数も増えれば、資産価値が高いという点も魅力といえます。広告と異なり基本的に費用を多くかけなくてもスケールできるチャネルとして中長期的な視点で育てていくべきでしょう。
SNSマーケティングのKPI
さて本題のSNSマーケのKPIについて、まずKPIとして設定する項目(指標)についてです。
下記が主なTwitter運用における指標になります。
投稿数(+リツイート数):どれだけ自社アカウントからアクションしたか
フォロワー数:どれだけの人が自社アカウントをフォローしてくれたか
インプレッション数:どれだけ自社アカウントからの投稿によりオーディエンスに接触したか
エンゲージメント数:どれだけ自社アカウントからの投稿に対して「いいね」や「リツイート」などの反応があったか
エンゲージメント率:投稿インプレッションに対するエンゲージメントが発生した割合(どれだけその投稿がオーディエンスに共感されたかの度合い)
UGC数:自社の商品サービスに関する他者の言及数
SNS運用の目的には「ファンの獲得」、「拡散による新規ユーザーへのリーチ」「新規商品の販促」など様々あるかと思いますが、全てに共通して特に私が重要だと捉えているのが、エンゲージメントとUGCと考えています。
結局、突き詰めていくと、SNS運用のゴールは、最終的に自社の商品サービスの購買につなげるためだと思います。
そのため、どれだけ自社の商品サービスについて、人々がTwitter上で話題にし、共感を生み、拡散され、多くの人にリーチし、興味関心を持ってもらえたかが重要となり、それを可視化する指標としてエンゲージメント(共感数)とUGC(言及数)が最適であると考えているからです。
ちなみにエンゲージメントは自社アカウントからの投稿に関しての数しか追えないし、そもそもユーザーが投稿するUGCの数なんて追えないと思われているかもしれませんが、各SNSの専門会社が提供しているソーシャルリスニングツールを使えば、自社投稿以外の数値についても追うことができます。
私は、ホットリンク社の口コミ係長やSpicebox社のTHINKといったツールを使ったことがあります。
そしてここで大きな問題が生まれます。結局SNSマーケによって生んだエンゲージメント、UGCがどれだけ商品サービスの購買に貢献したのかを可視化することが非常に難しいということです。
この課題のために、貢献度を示せず、運用を断念した、そもそも決裁が取得できなかったという方も少なくないと思います。
しかし、全く無理というわけでもありません。
売上貢献度を示す方法
以前弊社では、UGC数もしくはエンゲージメント数と対象商品サービスの指名検索量への貢献度を重回帰分析により評価したことがありました。まずその際に使用したデータが下記です。
対象の商品サービスに関する
①すべての広告インプレッションデータ
②UGC数、エンゲージメント数
③指名検索量データ
※日別もしくは月別で、期間はできるだけ長く半年から1年分くらいは分析に必要。
少し専門的な話になり、当初私も理解が難しかったのですが、③を目的変数(求める値)として、①と②を説明変数(③に影響を与える因子)と設定して相関分析をするといった概要になります。
この分析は、データ分析のプロに依頼が必要なため専門代理店などに対応可能なスタッフがいるのか確認が必要になります。
ちなみに弊社ではこの結果、SNS運用により指名検索量に約20%のリフト効果があったという結論になりました。
実数として、どれくらいの検索量に貢献という出し方もできるため、例えば、1000件の検索に貢献していた場合は、それを≒サイト訪問数と仮定してブランド指名検索経由のCVR等で掛け算していけば、推定値にはなりますが、売上への貢献度は示せなくはありません。
重回帰分析についてはこちらの記事で詳しく扱っているので実際に自分で分析にトライしてみたいという方はぜひお読みください。
目標数値の立て方
SNS運用に初めて取り組むという方の悩みの多くに、「何を根拠に目標値を設定すればよいのか」があるかと思います。
結論、誰もわかりませんw
立てた目標値が妥当かどうかを判断することは誰にもできません。ただそれでは、前に進めないと思いますので、次のような考え方ができるというご紹介までです。
①他社アカウントをベンチマークにする
必ずしも競合である必要はありませんが、自社のアカウントのコンセプトにもあわせて「この企業のアカウントのような状態を目指したい」というベンチマーク先を設定し、そのアカウントのフォロワー数やエンゲージメント数、UGC数などをソーシャルリスニングツールを使って把握し、いったんの目標値として設定することができます。
②まず数か月運用してみて現実的な数値を設定する
とりあえず運用を開始し、アクションを重ねることで「半年でここまではいけそうだ」といった目安となる数値を取得しながら設定していく方法もあります。先のない橋を自ら作りながら渡っていくような感じですがw
③売上目標からの逆算
先ほどご紹介したような形で指名検索量までを示すことができるのであれば、
(a)目標売上貢献度⇒(b)必要な指名検索量⇒(c)必要なエンゲージメント数 or UGC数
といったような形で逆算することは可能です。ただしこれには、(c)が(b)にどれだけ貢献できるかを一度分析によって算出する必要があるので、これも少し「②まず数か月運用してみて現実的な数値を設定する」に近い形にはなるかと思います。
いかがでしたでしょうか。皆様の実務の参考に少しでもお役に立てば幸いです。