この記事では、ビジネスにおけるリサーチの意義や目的、手法の全体像についてみていきます。
リサーチの定義
リサーチや関連する言葉の定義についていくつかみていきます。
リサーチ
「research」とは、ある事象や現象について詳細な調査や研究を行うことを指す。一般的には、科学的な方法を用いて、新たな知識や理解を得るための活動である。また、学術分野や産業界での研究開発(R&D)の一環として行われることが多い。
[出典] Weblio辞書より
マーケティングリサーチ
企業のあらゆるマーケティング課題に対して、有効な意思決定をサポートするための科学的な調査・分析のことです。
[出典] 株式会社インテージ用語集より
市場調査
「数字や数値で現在の市場を把握し、マーケティング施策(どうすれば製品が売れるかの作戦)を立てること」を指します。
[出典] 株式会社クロス・マーケティング「市場調査とマーケティングリサーチの違いとは」より
(マーケティングリサーチとの違いについて)
現在の日本では同じ意味に使われることが多いですが、厳密に言えば市場調査は「データや数値で現在の市場動向を知る」のに対し、マーケティングリサーチではもっと広義的に「未来の市場動向に対する予測や分析、考察」を行います。
リサーチという言葉は非常に広義で、通常ビジネスにおけるリサーチは「調査」と訳されることが多く、また、「市場調査」≒「マーケティング・リサーチ」として使われていることも少なくありません。
ここでは、リサーチを「ビジネス、特に企業のマーケティング活動における調査全般のこと」と定義して解説していきます。
また、リサーチは、「データの収集」を意味し、データの分析や活用を行う前の工程であることも抑えておきましょう。
リサーチのビジネスにおける意義とは?
まずはじめにビジネスでリサーチをする意義について抑えておきましょう。ビジネスにおいてリサーチを行う意義、それは、「ビジネスにおける成功確率を高められること」であると考えています。逆の言い方をすれば、「大きく失敗する確率を下げること」がリサーチの意義すなわちビジネスにおいてもたらされる価値となります。
皆さんはこれまでどのようなリサーチをこれまで実施したことがありますか?少し思い出してみましょう。
- 例えば、次のようなリサーチを実施したことがあるのではないでしょうか?
- Webアンケート調査
- デプスインタビュー
- グループインタビュー
- ホームユーステスト
- ネットリサーチ
それでは、なぜこのようなリサーチを実施したのか、その目的は何でしたでしょうか?
- 新商品開発のアイディアに繋がるインサイトを発見する
- 担当商品におけるユーザーの課題を発見する
- マーケティング戦略立案のために市場規模を把握する
など様々な目的(ビジネス課題の解決)があって実施をしたのではないかと思います。
これらは全てビジネスにおける成功確率を高めるというリサーチの意義に基づいています。
例えば、新商品の開発において、通常は何かしらの材料費や人件費といったコストが掛かります。もし多くのコストを投じて開発した商品が売れなかった場合、それは企業にとってのリスクとなります。そこで事前にリサーチを行い、できるだけ失敗する確率を下げるように努めます。例えば、定性インタビューを行い、開発しようとする商品のカテゴリーに関する消費者インサイトを発見し、開発のアイディアにつなげたり、定量アンケート調査でターゲット層の購入意向を聴取し、販売の予測を立てたりするなどして、私たちはリサーチを通して様々なリスクを低減させているのです。
良いリサーチとは?
リサーチの意義(ビジネスにもたらす価値)は、「ビジネスにおける成功確率を高めること(大きな失敗をする確率を下げること)」と説明しました。そして、リサーチの目的(ゴール)は、ビジネス課題を解決することです。つまり、リサーチを行った結果、施策(アクション)につなげることが重要です。逆に言えば、ビジネスの課題解決、アクションにつながらないリサーチは意味のないリサーチと言っても過言ではありません。このような「意味のないリサーチ」にならないようにするためには、リサーチをする前の計画が重要となります。計画とは、仮説をもとに、リサーチからどのような結果を得たいのか、そしてその結果をどのような意思決定に生かすのかを予め決めて、関係各所と合意形成をすることが必要となります。
リサーチで収集するデータの種類
行動データと意識データ
リサーチについて解説をする前にリサーチによって収集するデータについて前提を抑えます。マーケティングの分析で扱うデータは主に2種類あります。行動データと意識データです。違いについて表でまとめています。
データの種類 | どんなデータか | 例 |
行動データ | どんな行動をとったかがわかる | 商品の購買、WEB上の検索・クリック・訪問などの履歴 |
意識データ | どんな行動を取りそうかがわかる | アンケートで聴取した商品の購買意向、ブランドの好感度など |
デジタルマーケが主流となってきた昨今、WEB上で取得できる行動履歴のデータだけでPDCAを回している組織も多いですが、行動データだけでは、なぜ購入が増えないのか、なぜサイトから離脱してしまうのかのユーザーの行動の背景となる「WHY」が分からず、販促の改善につなげられないといった状況も散見されます。意識データも掛け合わせることで、行動データの背景にある顧客心理を解明することが重要です。アンケート調査やインタビュー調査といったリサーチでは、この意識データを収集します。
POINT:リサーチでは、意識データの収集ができる。行動データに意識データも組み合わせることで、顧客の行動の背景を理解し、マーケティング活動のPDCAに繋がる。
一次データと二次データ
リサーチには、一次データと二次データというものがあります。リサーチにおける目的に応じて使い分けます。順番としては、通常、すでに存在する二次データにあたり、「こうなのではないか」という荒い初期仮説を立て、その仮説の検証のために一次データである独自のアンケート調査などを行うといったサイクルが多いです。生産性高くリサーチを行うために覚えておきましょう。
データの種類 | どんなデータか/どんな時に利用するか | 例 |
二次データ | ・すでに存在する調査結果などのデータ(デスクリサーチ) ・まずざっと調べて初期仮説を設定する | WEB検索、文献検索、公的調査、民間調査レポートなど |
一次データ | ・自分たちで作り出すデータ ・仮説を裏付ける、深ぼる | 自社で実施するアンケート調査やインタビュー調査 |