マーケターとして統計学を学び、「マーケティング実務と統計学を結びつける」をテーマに情報発信をしています。
今回は、仮説検定の1つである「(2標本における)母比率の差の検定」をテーマに具体的なマーケティングでの事例をもとに解説していきます。
ケース:TVCMを打った地域での認知率の差
1ヶ月前に関東地方でTVCMを放映しました。その他の販促状況を加味し、比較対象エリアを関西地方としてTVCMを放映した商品について認知率を調査しました。その結果、下表でした。
回答者数 | 認知率 | |
関東 | 26,203 | 7.9% |
関西 | 12,808 | 7.1% |
0.8%という差は誤差なのか?それとも、有意な差なのか?について仮説検定をしていきます。
STEP1:仮説を立てる
まず、帰無仮説と対立仮説(主張したい仮説)を立てます。
帰無仮説:関東での認知率と関西での認知率に差はない
対立仮説 :関東での認知率と関西での認知率に差はある
STEP2:有意水準を決める
有意水準(α)=0.05として「95%の確率で有意と言えるか」を両側検定していきます。
また、回答者数が十分に大きいので、統計量zは標準正規分布N(0, 1)に従うとします。
STEP3:検定統計量を求める
今回は2標本における「母比率の差の検定」になるため次の式で検定統計量を求めます。
先ほどの集計結果を当てはめると下記になります。
回答者数 | 認知率 | |
関東 | n1 = 26,203 | p1(推定値)= 7.9%(0.0079) |
関西 | n2 = 12,808 | p2(推定値)= 7.1%(0.0071) |
検定統計量を計算すると「2.72」となります。
STEP4:結論
両側検定の有意水準0.05(5%)の場合、上側、下側2.5%の地点となり、今回算出した検定統計量「2.72」は上側の1.96よりも大きく、棄却域に入ります。
よって、「帰無仮説を棄却し、対立仮説を採択する」という結果となり、「関東地方の認知率と関西地方の認知率に差がある」という結論となりました。TVCM放映により認知率に影響があった可能性があるといえそうです。
※あくまで認知率に差があったかという仮説検定の結果、「差があった」という結論になりますので、「TVCMにより認知率が上がったか」を検証したわけではありませんのでご注意ください。