戦略策定のためのマーケティングフレームワーク8選【初めてマーケ戦略を策定する方へ】

マーケティングには、たくさんのフレームワークが存在します。しかし、どんなときにどのフレームワークを活用したら良いかがわからない。また、フレームワークを使うことが目的化してしまい、分析結果が、マーケティング課題の解決につながっていない。という経験をした方も少なくないのではないでしょうか?

私も初めてマーケティング戦略の立案を任されたとき、同じような経験をしたことがあります。そのときの経験をもとに、初めて戦略策定に取り組む方におすすめする分析・フレームワーク8つをご紹介します。

マーケティングプロセスをもとに全体像を把握

まず、フレームワークを活用する目的を明確にするために、マーケティングプロセスの中で、どのフレームワークが活用されているかを認識することが重要です。

マーケティングプロセスをここでは、「戦略」「戦術」「検証/管理」の大きく3つの段階にまとめ、各プロセスでよく活用される代表的なフレームワークをまとめています。

マーケティングプロセスと紐づくフレームワークの全体像

戦略策定で使えるフレームワーク

戦略プロセスの図示

戦略策定のプロセスでは、市場環境分析を行い、その結果をもとにSTPを策定します。

市場環境分析では、マクロ環境とミクロ環境の両視点から自社への影響を捉えます。マクロ環境分析では、PEST分析を、ミクロ環境分析では、3C分析を用いて分析を行います。

マクロ・ミクロの環境分析の結果をもとにSWOT分析で自社を取り巻く状況を整理し、更にクロスSWOT分析を行い、自社が強みを発揮して勝てる戦略の方向性を見極めていきます。

そして、STP分析により、市場の細分化(セグメンテーション)→対象顧客の特定(ターゲティング)→自社がどう市場で認知されるべきか(ポジショニング)を定義していきます。

PEST分析

PEST分析は、自社への影響を与えるマクロ環境を分析するフレームワークで、「Political(政治的要因)」「Economic(経済的要因)」「Social(社会的要因)」「Technological(技術的要因)」の4つの外部環境要因をもとに分析をします。マクロ環境は、自社ではコントロールができない事柄が対象です。

政治的要因には法規制や政策動向が含まれ、経済的要因には景気動向や為替変動が含まれます。社会的要因では人口動態や消費者の価値観の変化が、技術的要因では人工知能やクラウドといった技術革新や新技術の導入が考慮されます。

3C分析

3C分析は、自社に影響を与えるミクロ環境を「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの要素で分析するフレームワークです。ミクロ環境は、マクロ環境に対して、自社でコントロールが可能な要素を含んでいます。

市場・顧客では、市場規模や成長性、顧客ニーズといった観点で分析を行います。自社については、商品・サービスの市場シェア、戦略・ポジショニング、強み・弱み、どのような経営資源があるか、どのようなビジョン・理念を持っているかなどの現状や将来性を分析します。競合についても、自社同様に市場シェアや戦略・ポジショニング、強み・弱みを分析します。

これらの分析により、自社にとっての機会点や成功要因(Key Success Factor:KSF)の発見、自社にしか提供できない価値であるバリュープロポジションの発見につなげていきます。

SWOT分析

SWOT分析は、自社へのプラス影響とマイナス影響、内部環境(社内)と外部環境(社外)の2軸をもとに、「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)」「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」の4つの要素で分析するフレームワークです。

「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)」は、内部環境に焦点を当て、自社の資源や能力を評価します。「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」は、外部環境を分析し、市場の変化や競争状況を見極めます。これらの4つの観点は、PEST分析と3C分析で洗い出した結果をもとに整理することができます。

SWOT分析で4つの観点を整理したら、それらを組みわせて戦略の方向性を定める分析を行います。それが、クロスSWOT分析です。

「強み✖️機会(S-O)」では、強みを活かして機会を最大限に利用するための戦略を検討します。

「弱み✖️機会(W-O)」では、弱みを克服し、機会を捉えるための戦略を考えます。内部の弱点を改善し、外部のチャンスに対応する方策を探ります。

「強み✖️脅威(S-T)」では、強みを活かして外部の脅威に対抗する戦略です。リスクを回避するために、既存の資源や能力を活用します。

「弱み✖️脅威(W-T)」では、リスクを最小限に抑えるための戦略です。守りに徹するか、リスクを回避するための対応策を考えます。

STP分析

SWOT分析により自社の機会点やバリュープロポジションが把握できたら、次にSTP分析で、「誰に何の価値を提供するのか」を決めて、マーケティング戦略を定めていきます。

STP分析は、「Segmentation(セグメンテーション)」、「Targeting(ターゲティング)」、「Positioning(ポジショニング)」の3つのステップで分析をするフレームワークです。

Segmentationで、まず市場を細分化し、顧客の傾向ごとにセグメントを作ります。次にTargetingで、セグメントの中から自社が対象とするセグメント市場を決定します。そして、Positioningでは、対象と決めたセグメント市場の中で、自社が競合に対してどのような立ち位置になるのかを定めます。

ここまでが戦略策定のプロセスになり、自社として「どこで戦うのか」を定義することになります。

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戦術策定で使えるフレームワーク

戦術プロセスの図示

戦略プロセスで「誰に何の価値を届けるのか(WhoとWhat)」をSTPにより定義したら、次に戦術プロセスで、「顧客にどう価値を届けるか(How)」をマーケティング・ミックス(4P)で繋げて、定義をしていきます。

4P分析

マーケティング・ミックス(4P)は、「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(プロモーション)」の4つの要素で分析し、戦略と戦術をつなげるコンセプトを開発していくフレームワークです。

Product(製品)は、「どのような商品を開発するのか」を定義します。顧客のニーズを満たす商品やサービスを指し、品質やデザイン、機能などが含まれます。環境分析で捉えた市場のニーズを的確に捉えた商品を開発することが重要です。

Price(価格)は、「いくら売るのか」を定義します。製品やサービスに対して顧客が支払う価格を指します。適切な価格設定は、ターゲット市場や競争相手の動向、コスト構造を考慮して決定されます。

Place(流通販路)は、「どのように届けるのか」を定義します。商品が顧客の手元に届くまでの流通経路を指し、販売チャネルや物流体制が含まれます。商品を顧客が手に取りやすい場所や方法で提供することが求められます。

Promotion(プロモーション)は、「どのように知ってもらうのか」を定義します。製品やサービスの認知度を高め、購買意欲を喚起するための広告や販促活動を指します。広告、PR、キャンペーンなどが含まれ、効果的な情報伝達手段が重要です。

検証・管理で使えるフレームワーク

検証・管理プロセスの図示

検証・管理のプロセスでは、上市後(プロダクトをローンチした後)の商品・ブランドを育てるフェーズになります。マーケティング活動により、顧客の獲得やロイヤル化が進んでいるかを定期的に評価し、必要に応じて、施策の見直しを行います。市場の変化が大きい場合には、戦略の見直しから行うこともあります。

ファネル分析

顧客化の状況を分析する手法として、ファネル分析があります。ファネルとは、「漏斗(じょうご)」を意味し、顧客の購買プロセスを「認知」「興味関心」「検討」・・・などの段階に分けて、どこで歩留まりしている(次の段階への転換が悪いか)かを分析する手法です。

アンケート調査で取得した結果をもとに、この分析を行うことで、各段階での顧客の離脱率や行動を把握し、プロモーションや製品・価格の改善点の特定につなげることができます。また、競合他社の状況も合わせて把握することで、特にどの段階に課題・改善の機会がありそうなのかを相対的に分析することもできます。

どのような段階で分析をするのかは、各社の提供する商品のカテゴリや市場での浸透度により適切な項目、粒度で設定をします。(例えば、2C向けの商品か、2B向けの商品かなどで分析しやすい項目が変わってきます。)

RFM分析

RFM分析は、顧客の購買行動を基に、「Recency(最新購入日)」「Frequency(購入頻度)」「Monetary(購入金額)」の3つの指標を用いて既存顧客の状況を分析するフレームワークです。次のようなイメージで顧客をランク付けし、優良顧客には、特別優待を送る。離反顧客には、キャンペーン情報を送る。など、プロモーションのアクションを最適化することにつながります。

RFM分析のスコアリングと分析のイメージ

Recency(最新購入日)は、最後に購買した日からどれくらいの期間が経っているかを示す指標です。顧客が最近購入したかどうかを判断し、顧客の新鮮度や関心の高さを測ります。最近購入した顧客ほどアクティブで、再購入の可能性が高いと考えられます。

Frequency(購入頻度)は、一定期間内に顧客がどれだけ頻繁に購入したかを示す指標です。購入頻度が高い顧客は、そのブランドや商品に対するロイヤリティが高いと推測されます。

Monetary(購入金額)は、一定期間内に顧客がどれだけの金額を消費したかを示す指標です。高額な購入をした顧客は、企業にとって価値の高い顧客とみなされ、特別なサービスやプロモーションの対象になることが多いです。

NPS®︎(ネット・プロモーター・スコア)

NPS®︎(ネット・プロモーター・スコア)は、2003年にベイン・アンド・カンパニー社により開発された顧客のロイヤル度を測定するための指標です。企業や製品、サービスに対して、顧客がどの程度推薦する意向があるかを数値化するものです。NPS®︎は、顧客に「この商品やサービスを友人や同僚に勧める可能性はどのくらいありますか?」という質問を行い、0〜10のスコアで回答してもらいます。

NPSの算出方法についての説明

回答者は以下の3つのカテゴリに分けられます。
批判者(スコア0〜6):不満を持っている、もしくは他人に推奨しない顧客。
中立者(スコア7〜8):満足しているが、積極的には推薦しない顧客。
推奨者(スコア9〜10):積極的に他の人に推薦する顧客。

NPS®︎の算出は、推奨者の割合から批判者の割合を差し引いて行います。NPS®︎は、顧客の購買行動と連動しており、業績の先行指標となりうるため、多くの企業でKPIとして導入されています。

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まとめ

以上が、初めて戦略策定に取り組む方におすすめする8つのフレームワークの解説になります。ここで紹介した8つはあくまで私の経験上、まずは抑えておくと良いと考えるフレームワークになりますので、他にも多くのフレームワークがマーケティングやビジネスにおいては活用されています。

どのフレームワークを使う場合にも、マーケティングプロセスの中で、どの段階に位置付き、何を目的とするのかを考えてから取り組むようにしましょう。

  • 戦略プロセス:PESTや3Cを用いて、マクロ・ミクロの両観点から市場環境分析を行い、自社を取り巻く状況をSWOTで整理する。その結果をもとにSTPを策定し、自社が強みを発揮して勝てる戦略の方向性を見極めていく。
  • 戦術プロセス:「顧客にどう価値を届けるか(How)」をマーケティング・ミックス(4P)を用いて定義する。
  • 検証・管理プロセス:上市後の商品・ブランドについて、ファネル分析で、認知〜購入の歩留まり状況を把握したり、顧客のロイヤル化をRFMやNPSを用いて定期的に評価する。結果をもとに施策や戦略を見直す。